
TERAKOYA講座第5回|BtoBマーケティングのKPI設計とは?売上につなげるための数値設計と考え方
BtoBマーケティングのKPI設計とは、売上目標を起点に受注数・商談数・MQL数・リード数を逆算し、各フェーズの転換率を設定することで「機能する数値目標」を作る手法です。KPI設計の成否を分けるのは、リード数ではなく「売上からの逆算」と「営業との共通指標(MQL)の合意」の2点です。本記事では、6,650社以上のBtoBマーケティング支援実績に基づく実践的なKPI設計の5ステップと、事業フェーズ別のKPI例、そしてMQL定義の具体的な方法を解説します。
TERAKOYAとは?株式会社ベーシックが提供する、BtoBマーケティングの戦略設計からリード獲得、ナーチャリング、営業連携までを体系的に学べる全6回の実践型研修プログラムです。詳細はこちら
BtoBマーケティングに取り組んでいるものの、「リードは増えているのに売上につながらない」「どの指標を追うべきか分からない」といった課題を感じていませんか。
本記事は、これまで6,000社以上のBtoBマーケティングを支援してきた株式会社ベーシックが実際に提供している研修プログラムの内容をもとに構成しています。
本シリーズでは、その研修内容をもとに、各テーマごとに分解しながら、実務で活用できる形で解説していきます。
今回は第5回として、「KPI設計」にフォーカスし、BtoBマーケティングを売上につなげるための数値設計の考え方を解説します。
TERAKOYAシリーズはこちら
TERAKOYA講座第1回|BtoBマーケティングは何から始める?成果が出る企業が必ずやっている「設計」の考え方
TERAKOYA講座第2回|BtoBマーケティングのリード獲得は“設計”が9割|流入の前にやるべきCV設計とは
TERAKOYA講座第3回前編|BtoBナーチャリングにおけるメールの役割とは?成果につなげる設計の考え方
TERAKOYA講座第3回後編|BtoBホワイトペーパーの作り方|ナーチャリングを加速させるコンテンツ設計とは
TERAKOYA講座第4回前編|BtoBサイトの成果は“コンテンツ最適化”で決まる|CVを高める改善の考え方
TERAKOYA講座第4回後編|BtoBマーケティングにおけるSEOとは?成果につながるコンテンツ設計の基本
TERAKOYA講座第5回|BtoBマーケティングのKPI設計とは?売上につなげるための数値設計と考え方
TERAKOYA講座第6回|BtoBマーケティングにおける営業連携とは?受注率を最大化する考え方と実践方法
この記事のもととなっているマーケティング研修にご興味のある方はこちらをご覧ください。
BtoBマーケティングのKPI設計でよくある3つの失敗
BtoBマーケティングで数字の管理がうまくいかないのは、追っている指標が売上に結びついていないケースが多いからです。ここでは、KPI設計でよくある3つの失敗パターンを整理します。
リード数だけを追ってしまっている
マーケティング部門では、リード獲得数が分かりやすい成果指標になりやすい一方で、それだけでは質の差が見えません。大量のリードが取れていても、商談化しなければ売上にはつながりません。
単純な件数ではなく、売上に近づくリードをどれだけ生み出せているかまで見る必要があります。
売上とのつながりが見えていない
リード獲得と売上の間には、MQL、商談、受注など複数のステップがあります。この途中の数字が見えていないと、どこがボトルネックなのか判断できません。
分解がないままでは、改善の打ち手も曖昧になります。
営業とマーケの指標が分断されている
マーケティングはリード数、営業は商談数や受注数だけを見る状態だと、部門ごとに最適化が起こりやすくなります。その結果、「数は取れている」「いや質が悪い」という認識のズレが発生します。
指標の分断が、改善の分断を生む。 部門間のズレを防ぐには、売上から逆算した共通指標で会話することが重要です。
KPI設計の基本原則:売上から逆算する
KPI設計の出発点は売上です。どれだけリードを集めるかではなく、どれだけ売上を作る必要があるかから逆算することで、はじめて必要な商談数やリード数が見えてきます。

KGIとKPIの違いを理解する
KPI設計を始める前に、KGI(Key Goal Indicator)とKPI(Key Performance Indicator)の違いを明確にしておきましょう。
売上・受注件数がKGI、そこに至るプロセス指標がKPIです。この区別が曖昧なまま設計を始めると、何を改善すべきかが見えなくなります。
最終ゴールは売上である
マーケティング活動の目的は、PVやリード件数を増やすこと自体ではありません。最終的に事業成果へつながっているかどうかが重要です。
そのためKPI設計では、まず売上目標を起点に置き、そこから必要な商談数や受注数を考える必要があります。
マーケの役割は「必要なリード」を供給すること
営業が受注を担う一方で、マーケティングはその前段階として、必要な質と量のリードを供給する役割を持ちます。ここでいう「必要なリード数」は、売上から逆算された数字です。
営業プロセスと密接に関わるため、営業部門との連携を前提にKPIを設計することが重要です。マーケティングKPIは独立した数字ではなく、営業成果と連動した数字として設計しましょう。
売上から逆算するKPI設計5ステップ
ここからは、KPI設計の具体的な手順を5つのステップで解説します。

ステップ1:KGI(売上目標)を決める
まず、年間の売上目標を明確にします。「前年比120%」のような曖昧な設定ではなく、具体的な金額で設定しましょう。
「なんとなく前年比120%」のような根拠のない目標設定は、チームのモチベーション低下や予算の無駄遣いにつながります。
設定例:
- 年間売上目標:3億円
- うちマーケティング経由の売上目標:1.5億円
ステップ2:必要な受注件数・商談数を逆算する
売上目標が決まったら、平均受注単価と転換率をもとに逆算していきます。
逆算シミュレーション例:
転換率は自社の過去実績をベースに設定しましょう。実績がない場合は、商談化率20〜30%、受注率20〜40%を起点に調整します(ferretソリューションの支援実績に基づく目安値)。
ステップ3:現状数値を把握し、ボトルネックを特定する
逆算した目標値と現状の実績を比較し、どのフェーズにギャップがあるかを特定します。
ボトルネック特定の例:
この例では、リード数はある程度確保できているものの、MQL転換率が低いことがボトルネックです。リード数を増やすよりも、MQLの定義見直しやリードナーチャリング施策の強化が優先すべき改善ポイントになります。
KGIから逆算してKPIを設定し、ボトルネックを特定することが基本です。訪問が少ないのか、CVRが低いのかで打ち手が変わります。
ステップ4:KPIツリーで可視化する
逆算した数値をKPIツリーとして可視化することで、チーム全体で共通認識を持てるようになります。
KPIツリーの構造:
KGI:売上1.5億円├── 受注件数:100件(受注率25%)│ └── 商談数:400件(商談化率25%)│ └── MQL数:1,600件(MQL転換率50%)│ └── リード数:3,200件│ ├── SEO経由:1,200件│ ├── 広告経由:1,000件│ ├── セミナー経由:600件│ └── その他:400件└── 平均受注単価:150万円KPIをあまりに多く設定してしまうと、どの指標が重要なのかが見えなくなります。重要なKPIだけにとどめ、極力シンプルな状態で運用することで成果につながりやすくなります。
ステップ5:数値管理の仕組みを構築する
KPIを設計しただけでは成果は出ません。定期的にモニタリングし、改善サイクルを回す仕組みが必要です。
レビュー頻度の目安:
KPI管理の際には、メンバーや部門をまたいだ誰もが、いつでも確認できる環境を整えることが大切です。各KPIにおける効果測定を行い、問題が見つかり次第、改善策を実行する。この効果測定・改善のPDCAサイクルを回し続けることがポイントです。
KPIは「一度決めたら変えない」ものではありません。環境変化や実績データに基づいて、柔軟に見直すことが大切です。
事業フェーズ別のKPI設計例

BtoBマーケティングのKPIは、事業フェーズによって重点指標が変わります。マーケティングファネルの観点では、立ち上げ期はTOFU(Top of Funnel=認知段階)、成長期はMOFU(Middle of Funnel=検討段階)、最適化期はBOFU(Bottom of Funnel=決定段階)に対応する施策が中心になります。自社の現在地に合ったKPI設計を行いましょう。
立ち上げ期(0→1フェーズ)
マーケティング施策を始めたばかりの段階では、まず「量」を確保することが優先です。
成長期(1→10フェーズ)
リード獲得が一定できている段階では、「質」の管理にシフトします。
最適化期(10→100フェーズ)
商談化の仕組みが回り始めた段階では、転換率の改善と営業連携の深化が鍵になります。
MQLとは何か:リードの"質"を管理する仕組み
リード数を追うだけでは成果が見えない理由のひとつが、すべてのリードを同じ価値で見てしまうことです。そこで重要になるのがMQL(Marketing Qualified Lead)という考え方です。
MQLとは、営業に渡すべき状態まで温まったリードを定義するための指標です。
すべてのリードが同じ価値ではない
資料請求をしただけのリードと、複数ページを閲覧し比較検討しているリードでは、商談化の可能性が大きく異なります。その違いを無視すると、数は増えても営業成果は伸びにくくなります。
「どの指標でマーケティングから営業へパスするのか(MQL→SQL)」など、部門間の共通認識もKPI設計のカギとなります。
MQLは営業とマーケの「共通言語」になる
MQLの基準が曖昧なままだと、営業は「質が悪い」と感じ、マーケは「数は渡している」と感じやすくなります。共通定義を作ることで、部門間の会話が具体的になり、改善の方向性が揃います。
MQLの定義方法:3つの要素で設計する
MQLは感覚で決めるのではなく、属性情報と行動情報を組み合わせて定義していきます。

MQLは、営業に渡すべき状態まで温まったリードを定義するための指標です。
要素①:属性(企業規模・業種・役職)
自社にとって対象となる企業規模や業種、役職などを整理することで、そもそもターゲットに合っているかを判断できます。属性条件が合っていなければ、行動が活発でも受注につながりにくいケースがあります。
属性スコアの例:
- 従業員100名以上:+10点
- ターゲット業種:+15点
- 決裁者・管理職:+20点
要素②:行動(閲覧・DL・セミナー参加)
資料DL、料金ページ閲覧、セミナー参加などの行動は、検討度を測る重要なシグナルです。どの行動を重視するかは、商談化につながりやすいパターンをもとに決めると精度が上がります。
行動スコアの例:
- 料金ページ閲覧:+20点
- 事例ページ閲覧:+10点
- 資料ダウンロード:+15点
- セミナー参加:+25点
要素③:スコアリングで判断基準を明文化する
属性と行動を点数化し、一定以上をMQLとする方法が有効です。基準を明文化しておくことで、誰が見ても同じ判断ができます。
例:属性スコア+行動スコア=合計40点以上でMQL認定
スコアリングの基準は「一度決めたら終わり」ではありません。営業からのフィードバック(「このMQLは商談化しやすかった/しにくかった」)をもとに、定期的に見直すことが精度向上の鍵です。
BtoBマーケティングのKPIとMQLを連動させる運用方法
KPI設計とMQL定義は、別々に管理するのではなく連動させることで初めて機能します。

MQL数をKPIの中心に据える
単純なリード数ではなく、MQL数をマーケティングの主要KPIとして設定します。これにより、質の低いリードで件数だけを稼ぐ状態を防げます。
商談化率で継続的に調整する
MQL設定後も、実際の商談化率を継続的にモニタリングします。商談化率が目標と乖離していれば、MQL基準の見直しを検討しましょう。
- 商談化率が高すぎる → MQL基準が厳しすぎる可能性。基準を緩めてMQL数を増やす
- 商談化率が低すぎる → MQL基準が甘い可能性。基準を引き上げて質を担保する
営業との定期的なすり合わせを行う
KPIを設計することで、部門やそのメンバーを統一された定量指標で評価できるようになります。組織全体で共有される明確なパフォーマンス基準を提供することができ、公正かつ透明性のある評価プロセスを実現できます。
月次で営業チームとMQLの質についてフィードバックミーティングを行い、以下を確認しましょう。営業とマーケの連携についてはこちらの記事も参考にしてください。
- MQLから商談化したリードの特徴
- 商談化しなかったMQLの傾向
- スコアリング基準の調整が必要かどうか
よくある質問(FAQ)
まとめ:売上につながるKPI設計のために
BtoBマーケティングのKPI設計で最も重要なのは、「売上から逆算したKPI」と「営業と合意したMQL定義」を連動させることです。
本記事のポイント:
- KPI設計は売上から逆算する:リード数ではなく、売上目標を起点に5ステップで設計する
- KPIツリーで可視化する:チーム全体で共通認識を持ち、ボトルネックを特定する
- MQLで質を管理する:属性・行動・スコアリングの3要素でリードの質を定義する
- 営業と連携して運用する:共通指標で会話し、定期的にフィードバックを反映する
- 事業フェーズに合わせて調整する:立ち上げ期は量、成長期は質、最適化期は転換率に注力する
KPI設計は一度作って終わりではなく、実績データに基づいて継続的に改善していくものです。まずは自社の売上目標から逆算し、現状とのギャップを可視化するところから始めてみてください。
KPI設計や営業連携の仕組みづくりに課題を感じている方へ
ferretソリューションは、戦略立案から実行まで一貫して伴走し、マーケティングの成果で事業成長に貢献するマーケティングパートナーです。6,650社以上のサポート実績に基づくリアルな知見で、IT、製造、人材、コンサルティング業など、さまざまなBtoB企業を支援してきました。
KPI設計の策定から、MQL定義の設計、営業連携の仕組みづくりまで、貴社のフェーズに合わせた支援が可能です。「数字は追っているが成果につながらない」とお感じの方は、ぜひご相談ください。












