
BtoBマーケティング組織の立ち上げ方—ゼロから商談を生む5ステップ
BtoBマーケティング組織の立ち上げは、「経営層のコミット→最初の1人の選定→三位一体の体制構築→施策の優先順位決定→PDCAの仕組み化」の5ステップで進めます。立ち上げ期は1〜3名体制・売上の3〜7%の予算が目安で、KPIはリード数・SQL転換率・受注貢献額の3層構造で設計するのが成功の鍵です。6,650社以上のBtoB企業支援から見えた共通点は、「完璧な体制を待たず、動きながら組織を育てる」姿勢にあります。
「マーケティング組織を立ち上げたいが、何から手をつければいいのか分からない」——BtoB企業の経営者や事業責任者から、こうした相談が増えています。
従来の営業手法だけでは新規顧客の開拓に限界があると感じつつも、マーケティング部門をゼロから作るとなると、人材・予算・KPIの設計など決めるべきことが多く、なかなか一歩を踏み出せないのが実情ではないでしょうか。
この記事では、BtoBマーケティング組織の立ち上げに必要な事前準備から、具体的な5ステップ、フェーズ別の体制・予算の目安、よくある失敗パターンと対策、そして少人数で成果を出した企業の共通点まで、実務レベルで使える情報を体系的に解説します。
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BtoBマーケティング組織とは?なぜ今「立ち上げ」が必要なのか

BtoBマーケティング組織とは、法人向けビジネスにおいてリードの獲得から育成、商談創出までを仕組みとして担う専門チームのことです。従来の営業部門が「足で稼ぐ」個人の力に依存していたのに対し、マーケティング組織はWebサイト・コンテンツ・広告・メールなどのデジタルチャネルを活用し、再現性のある集客の仕組みを構築します。
購買行動の変化が「組織化」を迫っている
なぜ今、マーケティング組織の立ち上げが急務なのでしょうか。最大の理由は、BtoBの購買行動が大きく変化したことにあります。
現代のBtoB購買プロセスでは、顧客は営業担当者に会う前にWebサイトやSNSで自ら情報収集を終えている割合が増加しています。新規顧客との接点づくりや、検討初期段階での関係構築が、従来の訪問型営業だけでは困難になりました。
Gartnerの調査によれば、BtoBの購買プロセスにおいて意思決定の70%は営業担当者に会う前にデジタル上で完了しているとされています。つまり、営業が初めて顧客と接触する時点で、すでに検討の大半が終わっているのです。
この変化に対応するには、営業が接触する「前」の段階で見込み客と接点を持ち、情報を届ける仕組みが必要です。それを担うのがマーケティング組織です。
属人的な営業体制の限界
営業担当者個人のスキルや経験に依存した営業活動は、ノウハウが共有されず、事業全体の成果につながりにくい課題があります。エース営業に頼る体制では、その人が異動・退職すれば売上が大きく落ちるリスクを常に抱えることになります。
マーケティング組織を立ち上げることで、従来の営業手法に加えてWeb経由の問い合わせを増やし、「+α」の売上を効率的に生み出すことが可能になります。
マーケティング組織を立ち上げる前に決めるべき3つのこと
マーケティング組織の立ち上げで最も多い失敗は、「いきなり施策から始めてしまう」ことです。マーケティング組織の立ち上げで大切なのは、いきなり施策から始めないことです。目的があいまいなまま施策を始めると、成果が見えにくくなり、営業との連携もずれ、経営層の期待値とも合わなくなります。
施策に着手する前に、以下の3つを必ず決めておきましょう。
1. 目的の明確化
マーケティング組織を立ち上げるなら、まず目的を決めることが必要です。会社としてマーケティングに何を期待するのか。売上を増やしたいのか、商談を増やしたいのか、認知を広げたいのか、営業活動を仕組み化したいのか。ここを明確にすることで、やるべきことが見えてきます。
目的が曖昧なまま進めると、「リードは増えたが商談につながらない」「経営層が期待していた成果と違う」といったミスマッチが起きます。
目的は「売上目標の○%をWeb経由で獲得する」のように、数値で定義するのがおすすめです。抽象的な「認知拡大」だけでは、成果の評価ができません。
2. 責任範囲と成果定義の合意
失敗の根本原因は設計の欠如であり、採用・ツール・予算を揃える前に「責任範囲の合意」が必須です。
マーケティング部門がどこまでを担い、営業部門にどこから引き渡すのか。この境界線を経営層・営業と事前に合意しておくことが、組織が機能するための前提条件です。
具体的には、以下の項目を明文化しておきましょう。
- リードの定義:どの状態の見込み客をマーケから営業に渡すのか(MQL・SQLの基準)
- 成果指標:マーケティング部門が責任を持つ数値は何か
- 営業との連携ルール:リードの引き渡し方法、フィードバックの仕組み
3. 予算・KPIの設計
KPIはリード数だけでなく、SQL転換率・受注貢献額の3層構造で設計することで機能します。
マーケティング組織を立ち上げた直後によくある失敗が、「とりあえず月間リード○○件」という部分最適の目標を追ってしまうことです。質の低いリードを大量に営業に渡しても、「商談にならない」とクレームになり、部門間の対立を生みます。
目標設定は、事業の最終ゴールである「売上(KGI)」から逆算するロジックが必要です。「目標売上」から「必要な受注数」を導き、そこから「案件化率(目安40〜60%)」や「商談化率(目安20〜30%)」といったプロセス係数を用いて、必要なリード数を論理的に算出します。この逆算ロジックに基づく目標を営業部門と共有することこそが、両部門が「事業貢献」という同じ方向を向いて伴走するための羅針盤となります。
KPIは以下の3層構造で設計しましょう。
予算の目安としては、売上の3〜7%程度をマーケティング予算に充てるのが一般的です。
ゼロからのマーケティング組織立ち上げ5ステップ

ここからは、マーケティング組織をゼロから立ち上げる具体的な手順を5つのステップで解説します。
Step 1:経営層のコミットを取り付ける
マーケティング組織の立ち上げで最も重要なのは、経営層のコミットメントです。
経済産業省のDX推進ガイドラインでも、DX推進の最優先事項として「経営トップのコミットメント」が挙げられています。マーケティング組織の立ち上げも同様で、経営者が「なぜマーケティングに取り組むのか」を理解し、予算と人材を投資する意思決定をしなければ、現場だけの努力では組織は機能しません。
経営層に説明する際は、以下のポイントを押さえましょう。
- 購買行動の変化(70%がデジタル上で検討完了)という市場の事実
- 営業の属人化リスクと、仕組みで売上を作る必要性
- 成果が出るまでに最低6ヶ月〜1年はかかるという時間軸の共有
Step 2:最初の1人を決める
最初の1人は「実行できるプレイングマネージャー」を採り、戦略は後から補強します。
マーケティング組織の最初のメンバーに求められるのは、高度な戦略立案能力よりも「自分で手を動かせる実行力」です。
最初の1人に適した人材の条件は以下の通りです。
- 自社のサービス・顧客への理解が深い(社内異動が有力候補)
- 社内調整力がある(営業部門や経営層との橋渡しができる)
- Webマーケティングの基礎知識がある(または学ぶ意欲が高い)
- 改革への熱意がある(既存のやり方に固執しない)
「マーケティングの専門家を外部から採用しなければ始められない」と考える企業は多いですが、実は社内の営業経験者や事業企画担当者が適任であるケースも少なくありません。
BtoBマーケターの採用難易度は極めて高く、採用活動だけで数ヶ月が経過してしまうケースが多発しています。6,650社以上の支援実績からも、立ち上げ期において「正社員採用」に固執するのは悪手です。自社でしかできない「顧客へのヒアリング」や「戦略の意思決定」といったコア業務に社内リソースを集中させ、実行負荷の高い「コンテンツ制作」や「ツール運用」などのノンコア業務は、BtoBの知見を持つ外部パートナーに切り出す体制を組むことが、最短で成果を出す現実的な解です。
Step 3:「三位一体」の体制を構築する
マーケティング組織を機能させるには、意思決定者(経営層)×専任担当者×外部パートナーの「三位一体」の体制が効果的です。
この3者がそれぞれの役割を果たすことで、知識・リソース・意思決定のバランスが取れた組織運営が可能になります。特に立ち上げ期は社内にノウハウが不足しているため、外部パートナーの活用が成功の鍵を握ります。
6,650社以上のBtoB企業を支援してきた実務知見として、理想の組織体制は「年間顧客単価」と「商材難易度」によって大きく変化します。例えば、顧客単価が低く数が必要な商材ではマーケティングとインサイドセールスの比重が大きくなりますが、単価が高く決裁プロセスが複雑な商材では、少数精鋭のマーケティングと高度なフィールドセールスの連携が重要になります。他社の成功事例をそのまま真似るのではなく、自社のビジネスモデル(単価・難易度)を見極めた上で人員を配置することが、立ち上げの第一歩です。
Step 4:施策の優先順位を決める
立ち上げ期にすべての施策を同時に始めるのは現実的ではありません。以下の優先順位で進めるのが効果的です。
- サービスサイトの改修:顧客の課題に応えるコンテンツを整備する
- CTA(行動喚起)の設置:資料請求・問い合わせ・ホワイトペーパーなど、検討段階に応じた接点を用意する
- 導入事例の作成:比較検討段階の見込み客に最も効果的なコンテンツ
- リスト整理:既存の名刺・過去の問い合わせをデータベース化する
- 広告出稿:予算に余裕があれば、リスティング広告で即効性のあるリード獲得を狙う
「まずMAツールを導入しよう」と考えがちですが、ツール選定に時間をかけすぎて施策が何も進まないのは典型的な失敗パターンです。まずはサイトとコンテンツの整備から始めましょう。
組織の立ち上げ期は、専任のマーケターが不在であったり、他業務と兼務したりする「1人マーケター体制」でスタートするケースがほとんどです。「人がいない」状態で、いきなり巨大なWebサイトを作ったり、複雑なMAツールを導入したりすると確実に頓挫します。
立ち上げ期に必要なのは、最小限の機能(MVP)で素早く市場に問いかけるスモールスタートです。マーケティング担当者自身がノーコードで直感的に操作できるツール(CMSやMAの一体型など)を導入し、外注とのコミュニケーションコストを省きましょう。少人数でも自分たちの手で施策を回せる環境(打席数を増やせる環境)を作ることが、組織を軌道に乗せる最大の鍵です。
Step 5:PDCAの仕組みを作る
週次・月次・四半期の会議体を設計し、ダッシュボードは意思決定に使う指標だけに絞ります。
マーケティング活動を継続的に改善するには、定期的な振り返りの仕組みが不可欠です。
ダッシュボードに表示する指標は、意思決定に直結するものだけに絞りましょう。数値を「見る」だけで終わらず、「次に何をするか」を決める場にすることが重要です。
フェーズ別の体制と予算の目安
マーケティング組織は、最初から大きな体制を作る必要はありません。段階的に拡大していくのが現実的です。
マーケティング組織の成長ロードマップとして、立ち上げフェーズ(1年目〜)は3名体制(マーケティング責任者+マーケター1〜2名)で戦略設計を固め、Webサイトを整備し、必要最低限のコンテンツを用意します。成長フェーズ(3年目〜)は5〜10名体制に増員し、広告・オウンドメディア・セミナーなど各施策の担当者を配置します。
立ち上げ期(1年目)の体制と予算
- 人員:1〜3名(マーケティング責任者+実務担当1〜2名)
- 予算目安:売上の3〜5%
- 注力すべきこと:戦略設計、サービスサイト整備、基本コンテンツの作成、リスト整理
初年度の目標設定で重要なのは、過剰な期待をかけないことです。KPI設定は売上目標から逆算して現実的な数値を設定しましょう。
KPI逆算の具体例:年間売上目標2,400万円÷平均単価400万円=受注6件。受注率20%なら必要商談数30件。商談化率10%なら必要リード数300件。月あたり約25件のリード獲得が目標になります。
成長期(3年目〜)の体制と予算
- 人員:5〜10名(施策ごとの専任担当者を配置)
- 予算目安:売上の5〜7%
- 注力すべきこと:施策の多角化、ナーチャリング強化、営業連携の深化
成長期に入ったら、広告運用担当、コンテンツ担当、セミナー担当など、施策ごとに専任者を配置していきます。デザイナーやライターなど、コンテンツ制作に必要な人材の増員も検討しましょう。
マーケティング組織が失敗する3つのパターンと対策

6,650社以上のBtoB企業を支援してきた中で、マーケティング組織の立ち上げが頓挫するケースには共通のパターンがあります。
パターン1:経営層の無関心(コミットなき丸投げ)
「マーケティングは任せた」と言いながら、予算も権限も十分に与えず、短期間で成果を求めるケースです。
対策:立ち上げ前に経営層と「3か年計画」を共有し、各フェーズの目標と投資額を合意しておきましょう。マーケティングは即効性のある施策ではなく、仕組みを作る投資であることを理解してもらうことが重要です。
パターン2:営業との分断(リード定義の不一致)
マーケティング部門が「リードを渡した」と言い、営業部門が「使えるリードが来ない」と言う——この対立は、リードの定義が共有されていないことが原因です。
対策:MQL(マーケティング部門が認定したリード)とSQL(営業部門が認定したリード)の基準を明文化し、定期的に見直す仕組みを作りましょう。月次の振り返りで「渡したリードのうち何%が商談化したか」を共有することで、両部門の認識を揃えられます。
パターン3:完璧主義で動けない
「ツールが決まってから」「体制が整ってから」「戦略が固まってから」——完璧な準備を求めるあまり、半年経っても何も施策が実行されていないケースです。
対策:「動きながら育てる」姿勢を組織の方針として明確にしましょう。最初の3ヶ月で小さな成功体験を作ることが、組織の推進力になります。
見落としがちなリスク:少人数組織の「属人化」
「うちは立ち上げ期で少人数だから、属人化は仕方ない」と考えるのは危険です。少人数だからこそ、一人の担当者が離脱した際のリスクが致命傷になります。
6,650社以上の支援実績からも、属人化の根本原因は「全体戦略(設計図)の不在」にあることが分かっています。各施策の判断基準が担当者の頭の中にしかない状態を防ぐため、初期段階で「ペルソナ」と「カスタマージャーニーマップ」を作成し、チーム全体(営業部門含む)で共有しましょう。さらに、誰でも直感的に操作できるツール環境を整えることが、持続可能な組織力の土台となります。
少人数のマーケティング組織で成果を出した企業の共通点
マーケティング組織は、大人数でなくても成果を出すことができます。ここでは、少人数で大きな成果を上げた3社の事例から共通点を抽出します。
事例1:識学——テレアポからWeb集客へ転換し、問い合わせ月2,800件
組織コンサルティングを提供する株式会社識学は、テレアポ中心の営業からWeb集客に転換しました。
テレアポをやめた理由は明確でした。アポ単価は安く見えるものの、案件化・成約化がほぼゼロで、実質的な成約コストは非常に高かったのです。
Web集客への転換後、導入事例の作成などにかかっていた外注費を内製化することで3ヶ月で150万円を削減。そのコストを集客予算に配分し、内製化によってPDCAの速度を上げた結果、問い合わせ数は月3件から月2,800件へと飛躍的に増加しました。
事例2:キリンビバレッジ——マーケ2.5人で成約数5倍
キリンビバレッジ株式会社は、福利厚生サービスの新規事業立ち上げにおいて、わずか2.5人のマーケティング体制で成約数を5倍に伸ばしました。
BtoBの集客ノウハウがなく、リソースもない状態からのスタートでしたが、体系的なメソッドに基づいてサイト制作からWeb集客施策の運用体制を構築。従来の営業手法では取得できなかったリードをWebから獲得し、できるだけシステム化することでリソース不足を解消しました。
事例3:アルー——自然検索経由CV数が昨対850%増
法人向け教育研修事業を展開するアルー株式会社は、新規顧客開拓を経営課題としてデジタルマーケティングを立ち上げました。
マーケティング組織のメンバーを増やしてコンテンツマーケティングに注力し、1年間で800個近くのコンテンツを作成。数値にこだわってPDCAを回し続けた結果、2023年度には自然検索経由のCV数が昨対850%増を達成しました。
3社に共通する成功要因
これらの企業に共通するのは、以下の3つのポイントです。
- 「動きながら育てる」姿勢:完璧な体制を待たず、小さく始めて改善を重ねた
- 内製化によるPDCA高速化:外注に頼りきらず、自社でコンテンツを作り、素早く改善できる体制を構築した
- 外部パートナーの戦略的活用:ノウハウが不足する領域は外部の専門家を活用し、知見を社内に蓄積した
まとめ:マーケティング組織の立ち上げは「経営のコミット」から始まる
BtoBマーケティング組織の立ち上げで押さえるべきポイントを整理します。
- 事前準備:目的の明確化、責任範囲の合意、KPIの3層構造設計を経営層・営業と共有する
- 立ち上げの5ステップ:経営層のコミット→最初の1人→三位一体の体制→施策の優先順位→PDCAの仕組み化
- 成功の鍵:完璧を求めず「動きながら育てる」姿勢と、意思決定者×専任担当者×外部パートナーの三位一体の体制
マーケティング組織の立ち上げは、ツールの導入や人材の採用から始まるものではありません。経営者が「なぜマーケティングに取り組むのか」を明確にし、コミットすることから始まります。
「三位一体」の体制を構築する上で、外部パートナー選びは重要な意思決定です。
BtoBマーケティングの立ち上げ期は、「何から手をつければいいかわからない」「今の戦略で合っているのか不安」という壁に必ず直面します。手探りで間違った施策に予算と時間を浪費するのは、企業にとって大きな痛手です。
ferretソリューションは、6,650社の知見を体系化した実行型パートナーとして、BtoBマーケティングの戦略設計から施策の実行まで一貫した伴走支援を提供しています。「BtoBグロースステップ」という体系的なメソッドに基づき、戦略の壁打ちから、実行に必要なツール環境の構築、効果検証までをプロと一緒に進める「ハイブリッド型」の体制を築くことで、社内に正しいノウハウを蓄積しながら、最短距離でマーケティング組織を自走させることが可能になります。
「何から始めればいいか分からない」という段階からでも、まずは現状の課題整理から一緒に取り組むことができます。
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