BtoBマーケティング戦略の「立て方」|マーケ責任者が知るべき売上成果までのロードマップ
「リード獲得のための施策はたくさん打っているのに、なぜか売上に繋がらない」「MAやSFAは導入したものの、使いこなせず宝の持ち腐れになっている」「少ないリソースの中で、何から手を付ければ良いのかわからない」
もし、あなたが中堅BtoB企業のマーケティング担当者として、このような課題に直面しているなら、その原因は実行する「施策」ではなく「戦略の土台」にあるかもしれません。毎日のコンテンツ制作や広告運用といった「施策」に追われ、本来の目的である「事業貢献」を見失ってしまっては、どれだけリソースを投入しても成果には繋がりません。
BtoBマーケティングで成果を出すには、BtoCとは異なる「長期的な視点」と、「営業部門と完全に連携した意志ある戦略」が不可欠です。
本記事では、2,000社以上のBtoBマーケティング支援実績から得た知見に基づき、施策の目的化を避け、「売上に直結する戦略」の具体的な「立て方」と「実行ロードマップ」を全手順で解説します。この記事を読み終えることで、あなたは施策に振り回される現状から脱却し、「経営層も納得する再現性の高い戦略」を描けるようになります。
本記事の要点
「BtoBマーケティング戦略」を成功させるために、特に中堅・中小企業のマーケティング担当者が押さえるべき要点は以下の4つです。
- 施策の前に「戦略設計」に投資する: 施策実行を目的化させず、事業目標から逆算したKPI設定(意志あるKPI)と、営業連携を初期段階で完了させることが、全ての成果の土台になります。
- リソース不足は「外部ノウハウ」で解消する: 社内リソース(3〜5名体制)でのコンテンツ制作・PDCAには限界があります。実績あるパートナーの「体系化されたノウハウ」と「実行リソース」を賢く活用し、内製化への道筋を作りましょう。
- 経営層向けのROIを示す: 稟議を通すためには、施策の「効果」ではなく、リード数や商談化率に基づいた「投資対効果(ROI)」の具体的な試算と、リスク回避策を論理的に提示することが重要です。
- SFA/MAの「活用」を戦略に組み込む: 既に導入済みのツールが「入力作業」で終わらないよう、ペルソナ・ジャーニー設計に基づいて、データ活用と営業への情報連携の仕組みを戦略的に構築し直します。
BtoBマーケティング戦略の「成果が出ない」根本的な原因
リード獲得やWeb集客のために様々な施策を試しているにもかかわらず、一向に売上や商談数が増えない。これは、多くのBtoBマーケティング担当者が抱える共通の課題です。その根本原因は、個々の施策の失敗ではなく、「事業貢献の視点を欠いた戦略設計の甘さ」にあります。
施策の実行が目的化するメカニズム
戦略不在のまま施策を続けてしまうと、チームの活動は方向性を見失い、最終的に「施策の実行」自体が目的化してしまいます。
特にリソースが限られる中堅企業では、「まずはリードを増やさなければ」という焦りから、明確なターゲットや目的がないまま、SEO記事制作、Web広告出稿、ホワイトペーパー作成など、目の前のタスクに追われがちです。
その結果、施策ごとのKPI(例:記事のPV数、広告のクリック単価)は達成しても、「事業全体のKGI(例:年間売上、受注件数)に貢献しているかどうかの判断ができなくなります」。施策の数をこなすことが目的となり、疲弊するだけで、結局は「売上アップ」という本来のゴールには繋がらないという悪循環に陥ってしまうのです。
この悪循環を断ち切り、マーケティング活動を事業貢献に繋げるためには、施策の土台となる「意志ある戦略」の再構築が必須です。
BtoB特有の「意思決定の壁」と戦略の役割
BtoB(企業間取引)の商談は、BtoCのように個人が短期間で意思決定を完結させることはほとんどありません。一般的に「複数の関与者」(担当者、決裁者、利用者など)が関わり、検討期間も「数か月〜数年」に及ぶケースも珍しくありません。
この「意思決定の壁」を突破するためには、マーケティング戦略が単なる集客計画ではなく、「部門横断的な共通言語」として機能する必要があります。戦略は、「誰(ターゲット)に」「何を(価値)」「どのように(コンテンツ・チャネル)」提供し、「いつ(MQL定義)」営業にトスアップするのかを、関係者全員が納得できる形で明文化するものです。
この共通認識があることで、マーケティング部門だけでなく、営業部門(インサイドセールス・フィールドセールス)や経営層も含めた「一貫した顧客体験の提供」が可能になり、複雑な意思決定プロセスをスムーズに進め、成果へと繋がります。
売上に直結するBtoBマーケティング戦略のロードマップ(全体像)
施策の実行を目的とするのではなく、売上という事業貢献をゴールとするためには、「計画的なロードマップ」に基づいて戦略を策定し、実行していく必要があります。
BtoBマーケティング戦略の全体像は、以下のステップで進めることが体系的で効果的です。
Step | 名称 | 目的 |
|---|---|---|
Step 0 | BtoBマーケの理想を描く | 事業貢献の目標と長期計画を策定し、組織の目線を合わせる |
Step 1 | BtoBマーケの土台を作る | ターゲット、強みを整理し、顧客課題に繋がるWebサイトを構築する |
Step 2 | リード獲得を最大化する | 様々な集客施策をトライ&エラーし、リード獲得の勝ちパターンを見つける |
Step 3 | MQLを最大化する | ナーチャリングでリードを育成し、商談に繋がる良質なMQLを増やす |
Step 4 | 営業連携を深める | 営業との連携体制を確立し、商談化率・受注率を向上させる |
このロードマップを意識することで、自社が今どの段階にいて、次に何をすべきかが明確になり、「施策の迷子になることを防げます」。
事業貢献を意識した「意志あるKPI」の設定方法
マーケティング活動の成果を売上に直結させるには、KPIを「事業貢献」から逆算して設定する必要があります。単に「リード獲得数(件)」を追うのではなく、「商談化に足る良質なリード(MQL)」の数を目標とすることが「意志あるKPI」です。
目標設定の具体的な手順は、以下の通りです。
- 事業目標(KGI)の明確化: 年間売上目標から逆算し、必要な「新規受注数」を確定します。
- 必要な商談数の算出: 受注率から、必要な商談数(セールスパイプライン)を算出します。
- 必要なMQL数の設定: 商談化率(MQLから商談に進む割合)から、必要なMQL数(Marketing Qualified Lead)を算出します。
指標(例) | 目標数値 | 備考 |
|---|---|---|
年間売上目標 (KGI) | 5億円 | |
新規受注数 | 10件 | LTV 5,000万円と仮定 |
必要な商談数 | 33件 | 受注率 30%と仮定 (10件 ÷ 30%) |
必要なMQL数 | 100件 | 商談化率 33%と仮定 (33件 ÷ 33%) |
特に重要なのは、営業部門と連携し、「MQLの定義」を明確にすることです。単に資料請求をした人ではなく、「特定ページを〇回以上訪問し、かつ「具体的な課題解決コンテンツ」をダウンロードした企業」など、「確度の高い行動」に基づいたMQL定義にすることで、商談化率が大幅に向上します。
戦略策定の核となる4つのステップ
BtoBマーケティング戦略の策定は、一般的に環境分析から実行計画への落とし込みという流れで進められます。
- 環境分析(3C分析): 市場の動向、競合他社の強み・弱み、そして自社の提供価値を客観的に把握します。特にBtoBでは、「顧客(企業)の具体的な課題や業界トレンド」を深く掘り下げることが重要です。
- 戦略の方向付け(ターゲティング・ポジショニング): 誰をターゲットにするか(ターゲット企業/SAM:獲得可能な最大の市場)、自社が競合に対してどのような独自の価値を提供できるか(バリュープロポジション)を決定します。
- 具体的な施策の立案(4P/4C): ターゲットにその価値を届けるための製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)を設計します。プロモーションにおいては、ターゲットの検討フェーズに合わせたコンテンツの設計が核になります。
- 実行計画への落とし込み: 実行体制、ロードマップ、KPI、そして予算を明確にし、「経営層からの合意形成」を目指します。
このプロセスを通じて、施策の「羅列」ではなく、「一貫した事業貢献のための論理的な戦略」を構築することが可能です。
成果を生む「戦略設計」の具体的な手順
Webサイト、MA、SFAといった「ツール」は、戦略という設計図があって初めて価値を発揮します。施策を打つ前に最も重要な「土台作り」の具体的な手順を解説します。
STEP 1:営業戦略と連携したペルソナ・カスタマージャーニー設計
BtoB戦略設計の最も重要なプロセスは、「営業戦略と完全に連携したペルソナ(理想の顧客像)とカスタマージャーニーの策定」です。これが、マーケティング活動が売上に貢献する「意志」の源となります。
ここで作成するペルソナは、単なる部署名や役職名ではなく、「誰が」「どのような課題を抱え」「どのような情報を求めて」「どのようなプロセスで」意思決定を行うかを具体化するものです。
- ペルソナの深掘り: 「営業部門が実際に接している生の顧客情報」(成功事例、失注理由、顧客の声)をヒアリングし、ペルソナに反映させることが不可欠です。ペルソナには、「企業属性(従業員数、業種)」だけでなく、「担当者の役割、ミッション、情報収集手段」まで盛り込みます。
- MQL定義の連携: カスタマージャーニーの最終段階で、営業に引き渡すMQL(Marketing Qualified Lead)の「質」を営業部門とすり合わせます。「Webサイトを3回以上訪問し、価格ページを閲覧後、導入事例をダウンロードしたリード」など、具体的な「行動ベース」で良質なリードを定義することが重要です。
この戦略設計を疎かにしてしまうと、どんなに優れたコンテンツや広告を投下しても、最終的な商談化率が低迷し、「リードは増えたが売上に繋がらない」という状況を招きます。体系化されたノウハウに基づいた「戦略設計」こそが、その後の施策の効果を最大化するために不可欠です。施策の実行体制は整っているにもかかわらず、成果に繋がっていない場合は、「戦略の土台」を見直す必要があります。
STEP 2:ターゲット企業の課題深度に合わせたコンテンツマップ作成
策定したペルソナとカスタマージャーニーに基づき、顧客の「課題深度(検討フェーズ)」に合わせた適切なコンテンツを提供する「コンテンツマップ」を作成します。
コンテンツマップは、顧客の購買プロセスと、そのプロセスで解決すべき疑問や課題を埋めるためのコンテンツを整理した設計図です。
検討フェーズ | 顧客の課題深度 | 必要なコンテンツ例 |
|---|---|---|
認知/情報収集期 | 漠然とした課題を感じているが、解決策を検討していない段階 | SEO記事、用語解説、業界動向レポート |
比較/検討期 | 課題解決の具体的な方法を探し、製品・サービスを比較検討している段階 | 「ホワイトペーパー」(課題解決型)、「導入事例」(業種別)、比較資料、製品デモ動画 |
意思決定期 | 導入するサービスを決定し、社内稟議や最終決定を行う段階 | 「ROI試算シミュレーション」、「価格資料」、サポート体制、セキュリティ情報 |
コンテンツ制作においては、単なる資料の羅列ではなく、「ペルソナの抱える具体的な痛み(ペイン)」に寄り添い、段階的に解決策を提示していくストーリー設計が求められます。特にWebサイトでは、「良質なホワイトペーパー」や「導入事例」をCVポイントとして配置することで、検討期の顧客リストを効率的に獲得できます。
STEP 3:戦略実行フェーズの優先順位付けとPDCA体制構築
リソースが限られる中堅企業(マーケティング担当3〜5名体制)では、全ての施策を同時に行うことは非効率であり、成功の確率を下げます。初期段階では、「投資対効果が高く、かつノウハウを蓄積しやすい施策」に集中し、徐々に施策範囲を拡大していく「選択と集中」が重要です。
初期に注力すべき施策の例と優先順位の考え方は以下の通りです。
- Webサイト/フォームの最適化(EFO): 既に流入がある場合、フォームの離脱を防ぐEFOは、最も即効性が高く、無駄な機会損失を最小限に抑えます。
- SEO対策によるコンテンツ制作: 中長期的な資産となり、安定したリード獲得の土台を構築します(製造業などターゲットが限定的な業界に特に有効)。
- 確度の高いホワイトペーパー制作: 検討期にある顧客を獲得するための最重要CVコンテンツです。
戦略の実行段階に入ったら、「施策実行が目的化しない」PDCA運用体制を確立します。施策ごとのKPIを設定するだけでなく、必ずその上位にある「商談化率、受注貢献度」まで振り返り、営業からのフィードバック(SFA/MAのデータ)に基づいて戦略そのものを見直すサイクルを回しましょう。
中堅企業・製造業が陥りやすい戦略失敗パターンと成功事例
戦略を策定しても、それを実行する組織体制とリソースがなければ、成果を上げることはできません。ここでは、ターゲット層である中堅企業や製造業で特によく見られる失敗パターンと、それを乗り越えた成功のロードマップを解説し、E-E-A-T(経験・専門性)を補強します。
マーケティング組織(3〜5名体制)で発生するリソース不足の壁
マーケティング担当者が3〜5名程度の組織の場合、施策の実行フェーズに入ると、すぐに「コンテンツ制作」と「PDCA運用」のリソースが不足する壁にぶつかります。この壁が、せっかくの戦略を「形骸化」させてしまう最大の要因です。
課題 | 具体的な状況 | 結果 |
|---|---|---|
コンテンツ制作の停滞 | 担当者が本業(営業支援、展示会準備など)と兼務になり、月間の記事・資料制作本数が大幅に減る。 | SEO流入が伸びず、施策の効果発現に時間がかかる。リード獲得施策の打席数が足りず、ノウハウも蓄積されない。 |
ノウハウの属人化/不足 | 既存の知識だけで施策を進めてしまい、最新のWebマーケティングトレンドや競合の状況を反映できない。 | 施策が陳腐化し、投資対効果が徐々に低下する。「何が成功で、何が失敗か」の判断基準が曖昧になる。 |
PDCAサイクルの停滞 | 施策の振り返りが「数字の羅列」で終わり、具体的な「改善アクション」(例:ペルソナ見直し、次のコンテンツ企画)に繋がらない。 | 戦略が形骸化し、施策が目的化する悪循環が加速する。 |
このリソース不足の壁を乗り越えるには、「全てを内製化する」という発想を捨て、「体系化されたノウハウの導入」を目的とした外部リソースの活用が重要です。
従業員300名規模の製造業の成功ロードマップ(事例)
ある従業員300名規模の産業機械製造業の企業様は、製品の競争力は高いものの、Webサイトからの問い合わせが月に数件と低迷していました。Webマーケティングをリスタートした際の成功ロードマップと成功要因は以下の通りです。
フェーズ | 期間(目安) | 実施した主な施策 | KPIの推移(商談化率) |
|---|---|---|---|
Phase 1: 土台構築 | 1〜3か月 | 「営業部門との戦略/MQL定義連携、ペルソナ/ジャーニー策定、サイト構造の最適化」、EFO実施 | 10%未満 → 25% |
Phase 2: 勝ちパターン確立 | 4〜12か月 | 専門性の高い「ホワイトペーパー制作(月2本)」、顧客の課題にフォーカスした「SEO記事の集中投下」、インサイドセールス部門への「リード情報連携強化」 | 25% → 35% |
Phase 3: 施策の拡大/内製化 | 13か月以降 | Web広告(リターゲティング中心)の開始、既存記事の「リライトによる情報更新」、メールナーチャリングのセグメント拡大、コンテンツ制作の「一部内製化」 | 35% → 40% |
この事例の成功要因は、「Phase 1で戦略設計に徹底的に時間をかけたこと」、そして「Phase 2でリソースとノウハウを外部パートナーの専門的なコンテンツ制作支援で補った」点にあります。特に商談化率がPhase 1で大きく改善したのは、営業との連携によって「質の高いMQL定義」を確立したためです。
この事例のように、戦略設計のノウハウが不足している企業様こそ、実務的な成功事例を持つパートナーの知見を最大限活用することが、最短距離での成果に繋がります。
戦略実行のリソース不足を解消する3つの選択肢
BtoBマーケティングにおけるリソース不足は、中堅企業にとって避けられない問題です。この問題を解決し、戦略を前に進めるための具体的な選択肢と、それぞれの活用判断基準を解説します。
外部リソース(制作代行・人材常駐)活用の判断基準
リソース不足の解決策として、外部リソースの活用は必須です。しかし、ただ単に「人手」を補うだけでなく、「ノウハウの導入」と「自社での運用学習」の視点を持つことが重要です。
外部リソース活用の判断基準を、ノウハウ蓄積の視点から整理すると以下のようになります。
選択肢 | メリット | デメリット | 活用を推奨するケース |
|---|---|---|---|
① コンテンツ制作代行 | 制作工数を即時削減でき、一定の品質が担保される。 | ノウハウが社内に蓄積されにくい。戦略と実行に齟齬が起きやすい。 | 「制作量に圧倒的な不足」があり、ノウハウよりも「スピードと量」を優先したい場合。 |
② プロ人材の常駐(伴走型) | 実行と同時にノウハウが社内メンバーに継承される。戦略と実行のPDCAを高いレベルで回せる。 | 費用が高くなる傾向がある。内製化には一定の時間(6か月〜1年)がかかる。 | 「戦略の再設計」からPDCAまでを学びながら、「内製化」を目指したい場合。 |
③ ツールベンダーのサポート | 導入ツールの活用知見が深まり、関連施策(メール配信など)の効率が向上する。 | 汎用的なノウハウが多く、「業界特有の戦略設計」に弱い場合がある。 | 「SFA/MAを導入済み」で、ツールの使いこなしに課題がある場合。 |
外部リソースを選ぶ際は、「単なる作業代行」ではなく「体系化されたノウハウを持つ伴走パートナー」を選ぶことが、将来的な自立したマーケティング組織を作るための鍵となります。
経営層を説得する戦略稟議と投資対効果(ROI)の示し方
マーケティング担当者にとって、戦略策定の次の大きな壁は「経営層からの予算獲得」です。経営層が重視するのは「施策の効果」ではなく、「事業への貢献度」と「確実な投資対効果(ROI)」であることを理解しましょう。
失敗しない稟議書に必須の3つの構成要素
経営層向けの稟議書は、感情論ではなく、「数字と論理」で構成される必要があります。特に「戦略」の稟議を通すために必須となる3つの構成要素を解説します。
事業目標との連動性:
- 「Will/Must」の明確化: 「昨対比で売上〇%アップのために、「新規顧客〇件」が必要です。この達成のためにマーケティング部門が「MQLを〇件」生み出す必要があります」という形で、事業貢献との繋がりを明確にします。
- 「現状の課題と機会損失:」 現状のマーケティング活動が事業目標に対してどれだけ不足しているのか、機会損失を数字で示します(例:月間500件のホワイトペーパーDLユーザーのうち、営業にトスアップできているのは10件のみ、など)。
投資回収シミュレーション(ROI試算):
- 後述のROI計算に基づき、「投資額〇〇円に対し、○か月後に〇〇円の売上」が見込めます」という具体的なリターンを提示します。
- 特に戦略設計は、施策効果を最大化するための「成功の確率を高める投資」であることを強調します。
リスクと回避策(ロードマップ):
- 「施策を実行したが成果が出なかった」というリスクに対し、「フェーズごとのKPI達成度に応じた」施策の「中止ライン」や「見直し時期」を明記します。
- 短期(3か月)、中期(1年)、長期(3年)のロードマップを示し、「投資が段階的に行われる」ことを説明することで、経営層の心理的なハードルを下げます。
BtoBマーケティングにおけるROI試算の具体的な計算方法
マーケティング投資のROI(Return On Investment:投資対効果)を試算する際は、単なる広告費用だけでなく、「人件費やツールの固定費など、総投資額」を考慮に入れることが重要です。
ROI試算は、以下の簡潔な計算式をベースに、「現実的なコンバージョン率(CVR)と商談化率」を用いてシミュレーションします。
ROI(%) = {(利益貢献額 - 投資額) ÷ 投資額} × 100
<具体的なシミュレーション例>
- 顧客LTV(平均顧客単価×継続期間): 1,000万円
- 平均粗利率: 50%
- 年間マーケティング予算(投資額): 2,000万円(人件費・ツール費込み)
指標 | 目標値 | 算出方法 |
|---|---|---|
目標新規受注数 | 10件 | KGIから逆算(年間LTV 5億円の5%など) |
利益貢献額 | 5,000万円 | 10件 × LTV 1,000万円 × 粗利率 50% |
投資額 | 2,000万円 | マーケティング予算総額 |
ROI | 150% | {(5,000万円 - 2,000万円) / 2,000万円} × 100 |
この試算例では、投資額2,000万円に対し、150%のROI(利益貢献額5,000万円)が見込めることになります。この「投資対効果の明確化」こそが、経営層を説得し、継続的な予算を獲得するための最強の論拠となります。
FAQ
Q.社内のマーケティング理解がまだ深まっていない場合、何から始めるべきですか?
社内でまだBtoBマーケティングの重要性や進め方が十分に共有されていない場合、
いきなり施策を実行するのではなく、まず「マーケティングの目的と価値」を社内で共有することから始めましょう。
- マーケティングの意義を社内で共有する経営層や営業部門に対して、「マーケティングは単なる集客活動ではなく、営業の効率化やLTV(顧客生涯価値)の最大化につながる仕組みである」という点を、具体的な数値や事例を交えて説明します。
- シンプルなペルソナ作成から着手する最初から完璧なペルソナを作ろうとせず、まずは営業部門が「このタイプの顧客なら商談したい」と思える理想の顧客像をA4一枚で簡潔にまとめることから始めましょう。
この作業を通じて、マーケティングと営業の目線をそろえることができます。
初期フェーズでは、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。
たとえば、ホワイトペーパーのダウンロードから良質な商談を生み出すなど、具体的な成果を少しずつ社内で共有し、信頼を育てていくことを意識しましょう。
Q. 3年間の戦略ロードマップはどう設計しますか?
BtoBマーケティングは短期的な施策で大きな成果は出ません。成功には中長期的な視点が不可欠です。3年間のロードマップ設計は、「土台の構築」「勝ちパターンの確立」「事業貢献の最大化」という3つのフェーズに分けて考えると体系的に整理できます。
フェーズ | 期間(目安) | 重点目標と施策 |
|---|---|---|
1年目: 土台の構築 | 1〜12か月 | 「戦略設計(ペルソナ/ジャーニー)」の徹底。サイト/EFO改善。「SEOコンテンツ、ホワイトペーパー」の集中投下による初期リード獲得とノウハウ蓄積。 |
2年目: 施策の拡大と効率化 | 13〜24か月 | リード獲得の勝ちパターン(コンテンツテーマ、チャネル)を確立。「ナーチャリング施策(ステップメール)」の開始によるMQLの最大化。Web広告の拡大。 |
3年目: LTV向上/営業連携強化 | 25〜36か月 | 受注貢献度、LTVを加味したターゲット/訴求の再整理。「営業からのフィードバック(SFAデータ)」を施策に反映する仕組みの強化(営業支援としてのマーケティング)。 |
この中長期的な視点を持つことで、目先の施策に一喜一憂することなく、「持続的な事業成長」に繋がるマーケティング体制を構築できます。
まとめ
本記事では、中堅企業のBtoBマーケティング担当者様が直面する「施策が目的化し成果が出ない」という課題に対し、売上に直結する戦略の「立て方」と「実行ロードマップ」を解説しました。
戦略実行を加速させる伴走パートナーの選び方
戦略は策定して終わりではなく、「いかに愚直に、継続的に実行するか」が最も重要です。特にリソース不足が常態化している中堅企業においては、外部パートナーの選定が戦略の成否を分けます。
パートナーを選ぶ上での重要な評価軸は、以下の3点です。
- BtoB特有のノウハウと実績: BtoCの知見だけでは、複雑なBtoBの意思決定プロセスは攻略できません。「2,000社以上」といった確かなBtoB支援実績があり、そのノウハウが体系化されているかを確認してください。
- 戦略策定から実行までの一気通貫性: 戦略設計、コンテンツ制作、MA/SFA活用支援までを一貫して伴走できる体制を持つパートナーは、施策の一貫性を保ち、目的化を防ぎます。
- 柔軟な実行リソース提供体制: 社内のリソース状況は常に変化します。コンテンツ制作代行や、ノウハウを持つプロ人材の常駐など、「貴社の体制に合わせて柔軟に支援範囲を調整」できるパートナーこそが、戦略実行の停滞を防ぎます。
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