
BtoBマーケの成果を分ける「顧客理解」と「未顧客理解」——既存顧客の深掘りと新規市場開拓を両立する実践フレームワーク
BtoBマーケティングで成果を伸ばすカギは、既存顧客の「なぜ買ったのか」を深掘りする「顧客理解」と、市場の大多数を占める「買わない人」の行動原理を探る「未顧客理解」の両立にあります。BtoB市場では今すぐ購入を検討している層は全体のわずか5%程度とされ、残り95%の未顧客へのアプローチなしに持続的な成長は困難です。本記事では、DMU分析・カテゴリーエントリーポイント(CEP)・失注分析など、BtoB実務で明日から使える具体的フレームワークを5ステップの戦略設計プロセスとともに解説します。
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なぜ今「顧客理解」だけでは不十分なのか

「顧客理解はできている」という思い込みの落とし穴
多くのBtoBマーケティング担当者は、CRMやSFAに蓄積された業種・企業規模・役職といった属性データを見て「顧客のことは把握できている」と感じています。しかし、属性データだけでは「なぜその企業が自社を選んだのか」「意思決定の裏側で何が起きていたのか」は見えてきません。
マーケティング施策を実行しているのに成果が出ないという課題を抱える企業の多くは、この「理解の浅さ」が根本原因になっています。
リード獲得はできても商談化しない構造的な原因
リードは月に数百件取れているのに、商談化率が一桁台で伸び悩む——。この状況は、「誰に」「何を」伝えるべきかの解像度が低いまま施策を回していることから生まれます。BtoBにおける商談化率(リード→商談化)の目安は20〜30%程度とされていますが、顧客理解が浅い企業ではこの水準に届かないケースが少なくありません。
「買わない人」を理解しないと市場は広がらない
さらに見落とされがちなのが、自社の製品・サービスをまだ購入していない「未顧客」の存在です。既存顧客の深掘りだけでは、すでに獲得できている市場の最適化にとどまります。新規市場を開拓し、リード獲得の母数そのものを拡大するには、「なぜ買わないのか」「そもそも検討すらしていないのはなぜか」を理解する視点が不可欠です。
「顧客理解」と「未顧客理解」の違いを整理する

顧客理解とは——「買った人」の深層を掘る
顧客理解とは、自社の製品・サービスを購入した(または購入を検討している)顧客について、属性情報だけでなく、購買動機・意思決定プロセス・導入後の成功体験までを深く把握することです。BtoBでは個人ではなく組織として購買決定を行うため、DMU(意思決定関与者)の構造を理解することが特に重要になります。
未顧客理解とは——「買わなかった人・知らない人」の行動原理を探る
未顧客理解とは、自社の製品・サービスを購入していない人々——非認知層・離脱層・競合利用層——がなぜ購入に至らないのかを構造的に理解することです。マーケティングサイエンティストの芹澤連氏が提唱したこの概念は、もともとBtoC領域で注目されましたが、BtoBにおいても極めて有効な視点です。
BtoBにおける両者の関係性
両者は対立する概念ではなく、「深化」と「探索」の両輪として組み合わせることで、BtoBマーケティングの成果を最大化できます。
BtoBにおける顧客理解の実践手法
DMU(意思決定関与者)分析——役割ごとの懸念を特定する
BtoBの購買決定には複数の関与者が関わります。DMU分析では、以下の6つの役割を特定し、それぞれの関心事に合わせたコミュニケーションを設計します。
実践のポイント: 商談やヒアリングを通じて関与者の所属・役職を特定し、誰が推進派で誰が慎重派かを「パワーマップ」として可視化します。役割ごとに訴求メッセージを変えることで、組織全体の合意形成を後押しできます。
よくある失敗例として、現場担当者(使用者)だけを説得し、決裁者が重視する「経営インパクト」の情報を提示しなかったために最終承認で否決されるケースがあります。DMU全体を見渡す視点が重要です。
カスタマージャーニーマップ——検討開始から定着までを可視化する
BtoBの購買プロセスは長期にわたります。「課題認識→情報収集→比較検討→社内稟議→導入→定着」の各フェーズで、顧客がどんな情報を求め、どんな不安を抱えているかを時系列で整理しましょう。
顧客の行動パターンを理解することで、各フェーズに最適なコンテンツを配置できるようになります。
行動履歴分析——デジタルデータから「買う理由」を読み解く
MAツールやCRMに蓄積されたWebサイトの閲覧履歴、メールの開封・クリック、セミナー参加履歴などの行動データを分析します。「受注に至った企業は、導入事例ページを平均3回以上閲覧していた」といったパターンが見えれば、コンテンツ戦略の優先順位が明確になります。
BtoBにおける未顧客理解の実践手法
カテゴリーエントリーポイント(CEP)の特定——「どんな場面で想起されるか」を洗い出す
CEP(カテゴリーエントリーポイント)とは、顧客が特定の製品カテゴリーを検討し始める「きっかけ」となる状況や記憶の手がかりです。BtoBでは、以下のような業務上の場面がCEPに該当します。
- 課題が顕在化するタイミング: 「月次レポートの作成に毎回3日かかっている」と気づいた瞬間
- 組織変化のタイミング: 新任マネージャーの着任、部門統合、予算策定期
- 外部環境の変化: 法改正、競合の動き、業界トレンドの変化
実践の進め方: 既存顧客へのインタビューで「なぜ検討を始めたか」を深掘りし、共通する3〜5つのCEPを特定します。ここで重要なのは、「なぜ自社を選んだか(ブランド選択理由)」ではなく、「なぜそのカテゴリーの検討を始めたか(カテゴリーへの入り口)」を聞くことです。
CEPを特定したら、そのきっかけとなる場面に合わせたコンテンツ(ブログ記事、ホワイトペーパー、セミナー)を用意しましょう。未顧客が「困った」と感じた瞬間に自社が想起される状態(メンタルアベイラビリティ)を作ることが目的です。
非購買理由の調査——「なぜ買わなかったのか」を体系的に把握する
未顧客が購入に至らない理由を、以下の5分類で整理すると構造的に把握できます。
- 認知の壁: そもそも自社の存在を知らない
- 関心の壁: 知っているが、自分ごとと感じていない
- 機能の壁: 必要な機能・要件を満たしていないと思っている
- 価格の壁: 費用対効果が見えない、予算が合わない
- 組織の壁: 社内の合意形成が難しい、導入の優先度が低い
失注分析を未顧客理解に転換する
失注分析は、単なる「負け」の記録ではなく、未顧客理解の宝庫です。SFAで失注理由を「機能」「価格」「タイミング」「競合優位」「組織要因」などの選択肢で標準化し、定量的に集計しましょう。
さらに効果的なのは、営業担当者ではなく第三者(マーケティング部門や外部調査会社)が失注先にヒアリングする方法です。営業には言いにくい本音を引き出すことで、非購買理由の解像度が格段に上がります。
失注したリードのリサイクルの仕組みを構築することで、一度は離れた見込み顧客を再びナーチャリングの対象に戻すことも可能です。
顧客理解×未顧客理解を組み合わせたBtoBマーケ戦略の設計ステップ

ここからは、顧客理解と未顧客理解を統合し、実際のマーケティング戦略に落とし込む5ステップを紹介します。
ステップ1:既存顧客の「勝ちパターン」を言語化する
まず、受注に至った顧客に共通するパターンを洗い出します。
- どの業種・規模の企業が多いか(属性パターン)
- どんな課題を抱えていたか(課題パターン)
- DMUの中で誰が推進役だったか(意思決定パターン)
- どのコンテンツに接触してから商談化したか(行動パターン)
アウトプット例: 「従業員100〜300名のIT企業で、マーケ担当者が起案し、事業部長が決裁。導入事例を3本以上閲覧した後に資料請求するパターンが受注率40%」
ステップ2:未顧客の「不買理由」を5分類で整理する
前章で紹介した5分類(認知・関心・機能・価格・組織)を使い、失注データ・営業フィードバック・市場調査から不買理由を整理します。
アウトプット例: 「認知の壁が最大のボトルネック。ターゲット企業の60%が自社サービスを認知していない」
ステップ3:勝ちパターンと不買理由のギャップからコンテンツ戦略を設計する
勝ちパターンから「刺さるメッセージ」を抽出し、不買理由から「埋めるべきギャップ」を特定します。
ステップ4:CEPに基づいたタッチポイントを設計する
ステップ1で特定したCEP(検討のきっかけ)に合わせて、未顧客が最初に接触するタッチポイントを設計します。
直通ルートと育成ルートの2つを意識したコンテンツ設計が重要です。「今すぐ客」には事例やデモで直通ルートを用意し、「未顧客」にはCEPに合わせた啓蒙型コンテンツで育成ルートを構築します。
ステップ5:営業フィードバックループで継続的に精度を上げる
商談化率や受注率の向上でマーケターがやるべきことは、「営業からのフィードバックに基づいた施策の改善」「効率的なリード情報の伝達」「提案に効果的なコンテンツの提供」です。
営業が商談で得た「顧客の本音」「競合との比較ポイント」「失注の真因」を定期的にマーケティングにフィードバックする仕組みを作りましょう。このループが回ることで、顧客理解と未顧客理解の精度が継続的に向上します。
よくある失敗パターンと対処法
失敗1:属性データだけで「顧客理解できている」と思い込む
なぜ起きるか: CRMに業種・規模・役職が入っているだけで「顧客を理解している」と錯覚してしまう。
対処法: 属性データに加えて、「なぜ買ったのか(購買動機)」「誰が意思決定に関わったか(DMU)」「どのコンテンツが決め手になったか(行動データ)」の3つを必ず記録・分析する運用に切り替えましょう。
失敗2:未顧客理解を「ペルソナの拡張」と混同する
なぜ起きるか: 「未顧客を理解する=新しいペルソナを作る」と解釈してしまい、架空の人物像を量産してしまう。
対処法: 未顧客理解の本質は「なぜ買わないのか」の構造的な把握です。ペルソナではなく、不買理由の5分類とCEPの特定に集中しましょう。実データ(失注理由、営業フィードバック)に基づくことが重要です。
失敗3:調査して終わり——施策への接続が抜ける
なぜ起きるか: 顧客調査やインタビューを実施しても、結果がレポートとして共有されるだけで、具体的な施策に反映されない。
対処法: 戦略と実行の「分断」を埋めることが不可欠です。調査結果を「コンテンツの企画」「営業資料の改善」「ナーチャリングシナリオの見直し」など、具体的なアクションアイテムに必ず変換しましょう。調査→施策→検証のサイクルを四半期単位で回すことをおすすめします。
顧客理解・未顧客理解は一度やって終わりではありません。市場環境や競合状況は常に変化するため、少なくとも四半期に1回は見直しの機会を設けましょう。
よくある質問
まとめ:顧客理解と未顧客理解の両立がBtoBマーケの成長エンジンになる
BtoBマーケティングの成果を持続的に伸ばすには、既存顧客を深く理解する「顧客理解」と、市場の大多数を占める未顧客の行動原理を探る「未顧客理解」の両方が必要です。
本記事で紹介した5ステップを実践することで、「リードは取れるが商談化しない」「新規市場の開拓方法がわからない」といった課題を構造的に解決できます。
ただし、顧客理解と未顧客理解を自社だけで体系的に進めるには、ターゲット設計の見直しからコンテンツ戦略の再構築、営業連携の仕組みづくりまで、一貫した取り組みが求められます。
IT、製造、人材、コンサルティング業など、さまざまなBtoB企業を6,650社以上支援してきたferretソリューションでは、20年以上にわたる自社実践と6,650社の支援実績から導き出したノウハウを体系化した「BtoBグロースステップ」を活用し、顧客の行動パターンを理解するフェーズ(STEP3)から営業が獲得した情報を活かしたサイクルを作るフェーズ(STEP4)まで、戦略設計と実行を一貫して伴走支援しています。
机上の空論ではなく、現場で本当に使える「型」を自社に取り入れたい方は、まずはお気軽にご相談ください。
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