BtoBリスティング広告で成果を出す戦略設計|CPA最適化より重要なKPI設定
「リスティング広告のCPA(獲得単価)は目標を達成しているのに、なぜか商談が増えない」 「代理店に任せているが、上がってくるレポートはクリック数や表示回数の報告ばかりで、事業成果が見えない」 「そろそろ運用を見直したいが、社内にノウハウがなく、何から手をつければいいかわからない」
BtoBマーケティングを担当されている方の中には、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。特に中堅企業では、マーケティング担当者が少人数、あるいは兼務で動いているケースが多く、日々の運用業務に忙殺されがちです。その結果、本来最も時間をかけるべき「戦略」の検討がおろそかになり、目の前のCPAを下げるための細かいテクニック論に終始してしまう悪循環に陥っています。
BtoB商材、特に検討期間が長く単価が高いサービスにおいて、リスティング広告は単なる「集客装置」ではありません。見込み顧客(リード)と最初に出会い、信頼関係を構築するための重要なタッチポイントです。本記事では、2,000社以上のBtoBマーケティング支援実績を持つferretのノウハウを基に、商談・受注といった「売上」に直結するリスティング広告の戦略設計プロセスを解説します。小手先のテクニックではなく、事業成長を牽引するための本質的な取り組み方を、順を追って見ていきましょう。
この記事の要点
- BtoBリスティング広告の失敗原因は「運用テクニック」以前の「戦略設計」の欠如にある
- CPA(獲得単価)の安さではなく、商談・受注から逆算したKPIと予算設計が重要
- 広告とLP、ホワイトペーパーなどのオファー(特典)を一貫させ、検討フェーズに合わせる必要がある
- マーケティングと営業(IS/FS)が連携し、リードの「質」をフィードバックする仕組みが不可欠
目次[非表示]
BtoBリスティング広告で「成果が出ない」根本原因
多くのBtoB企業がリスティング広告で成果を出せない最大の理由は、アカウント構造や入札調整の不備ではありません。それ以前の段階にある、マーケティング戦略全体との不整合にあります。ここでは、なぜ従来のやり方ではうまくいかないのか、その根本原因を掘り下げます。
運用テクニックの前に「戦略設計」が不足している
「どのキーワードに入札するか」「入札単価をいくらにするか」。これらは確かに重要ですが、あくまで戦術レベルの話です。成果が出ないプロジェクトの多くは、その前段階である「誰に(ターゲット)」「何を(メッセージ)」「どのように(オファー)」届けるかという戦略設計(STP:セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)が曖昧なまま運用が開始されています。
この土台がないまま広告運用を開始することは、地図を持たずに航海に出るようなものです。誰のどんな課題を解決するサービスなのかが言語化されていなければ、どれだけ広告費をかけても、質の低いリードが集まるだけで商談には繋がりません。
BtoBとB2Cの決定的な違いと「検討期間」の壁
BtoBマーケティングがB2Cと決定的に異なる点は、購買意思決定に関わる人数の多さと、それに伴う検討期間の長さです。B2C商品であれば、広告をクリックしてその場で購入という衝動買いも期待できますが、BtoBではまずあり得ません。担当者が情報収集し、比較検討し、上司に稟議を通すという長いプロセスが存在します。
この「検討期間の壁」を無視し、広告のランディングページ(LP)でいきなり「お問い合わせ」や「購入」を迫っても、コンバージョン(CV)率は上がりません。BtoBのリスティング広告では、今すぐ客を刈り取るだけでなく、情報収集段階のユーザーを適切にリードとして獲得し、その後のナーチャリング(育成)プロセスへ接続する視点が必要です。広告単体で完結させようとするのではなく、検討プロセス全体の一部として広告を位置付ける必要があります。
CPA(獲得単価)の罠と本来追うべき指標
多くの現場でKPI(重要業績評価指標)として設定されるCPAですが、これを絶対視することは危険です。CPAを安くすることだけを追求すれば、競合が少ない(=需要も少ない)キーワードや、質の低いディスプレイネットワークへの配信を増やすという安易な手段に走りがちになります。その結果、「学生」や「営業目的の売り込み」、「情報収集のみで予算のない個人」などのリードが増え、CPAは見かけ上良くなっても、商談化率は著しく低下します。
本来追うべきは、1件の商談を獲得するためのコスト(Cost Per Opportunity)や、受注1件あたりのコスト(CAC:顧客獲得コスト)です。CPAが高くても、そこから太い案件の受注に繋がるのであれば、その広告投資は正解です。マーケティング担当者は、CPAという「部分最適」の罠から抜け出し、商談・受注への貢献度という「全体最適」の視点を持つ必要があります。
【ステップ1】戦略立案の準備:誰に何を届けるか
ここからは具体的な戦略立案のプロセスに入ります。まずは運用の土台となる「ターゲット理解」と、ユーザーを行動させるための「オファー設計」を行います。ここがズレていると、以降の施策すべてが無駄になります。
ペルソナ設計と検索意図の深掘り
効果的なキーワードを選定するためには、「自社のサービスを必要としているのは誰か(ペルソナ)」を具体的に定義する必要があります。業種・企業規模だけでなく、担当者の役職、抱えている課題、業務上のミッションまで深掘りします。
例えば「勤怠管理システム」を売りたい場合、ターゲットが「経営者」なら「コスト削減」「労務リスク回避」といった観点で検索するかもしれません。一方、「現場の総務担当者」なら「集計の手間削減」「スマホ打刻」といった機能面での検索が予想されます。
単にビッグワードを羅列するのではなく、ペルソナが検索窓に打ち込む言葉の裏側にある「解決したい課題(検索意図)」を読み解くことが、質の高いリード獲得への第一歩です。
カスタマージャーニーに基づくキーワード選定
ペルソナの購買行動プロセス(カスタマージャーニー)に基づき、キーワードを分類します。一般的に以下の3つのフェーズで考えると整理しやすくなります。
「情報収集フェーズ(課題認知)」: 「業務効率化 方法」「〇〇コスト削減」など。課題は感じているが解決策が定まっていない状態。検索ボリュームは多いが、すぐの商談化は難しい。
「比較検討フェーズ(解決策模索)」: 「勤怠管理システム 比較」「〇〇ツール おすすめ」など。具体的な解決策を探しており、確度が高い。
「指名検索フェーズ(決定)」: 「〇〇(自社名) 導入事例」など。すでに自社を知っており、検討の最終段階にいる。
限られた予算で最大の成果を出すには、まずは「比較検討フェーズ」と「指名検索フェーズ」のキーワードを確実に取りに行きます。予算に余裕が出てきた段階で、徐々に「情報収集フェーズ」へとキーワードを拡張していくのがセオリーです。
ターゲット段階に合わせた「オファー(CTA)」の設計
選定したキーワード(ユーザーの熱量)に合わせて、提示するオファー(CTA:Call To Action)を変えることも重要です。「今すぐ導入したい」と考えている層に「お役立ち資料」を提示するのは遠回りですし、逆に「まずは情報収集したい」層に「製品デモ予約」を迫っても離脱されます。
ターゲット層 | キーワード例 | 推奨されるオファー (CTA) |
|---|---|---|
「潜在層」 | 「〇〇とは」「〇〇 方法」 | ホワイトペーパー、eBook、チェックリスト |
「顕在層」 | 「〇〇 比較」「〇〇 費用」 | サービス資料、事例集、料金表 |
「今すぐ客」 | 「〇〇 導入」「(指名ワード)」 | 相談会、デモ予約、見積もり依頼 |
このように、ユーザーの検討段階に合わせた適切な「出口」を用意することで、コンバージョン率は劇的に改善します。
【ステップ2】適正予算の算出と費用対効果シミュレーション
戦略が決まったら、次は予算です。「とりあえず月30万円で」といった感覚的な決め方では、十分なデータが集まらず検証すらできない事態に陥ります。目標から逆算したロジックのある予算策定が必要です。
目標受注数から逆算する予算策定ロジック
BtoBマーケティングにおける予算は、最終的なゴールである「目標受注数」から逆算して算出します。以下の計算式を用いることで、必要なリード数と予算が見えてきます。
- 「必要商談数」= 目標受注数 ÷ 受注率(例:5件 ÷ 20% = 25商談)
- 「必要リード数」= 必要商談数 ÷ 商談化率(例:25商談 ÷ 10% = 250リード)
- 「必要予算」= 必要リード数 × 目標CPA(例:250リード × 10,000円 = 250万円)
このシミュレーションを行うことで、「月予算50万円で受注5件ほしい」という要望が無茶であることや、逆に目標達成のためにはどのKPI(受注率や商談化率)を改善すべきかが明確になります。
競合に勝つための入札強弱とエリア戦略
中堅企業の場合、大手企業と正面から予算勝負をしても勝ち目はありません。限られた予算(例えば月100〜200万円程度)で戦う場合は、「選択と集中」が戦略の鍵となります。
「エリアの絞り込み」: 全国配信せず、営業が訪問可能な地域や、自社のシェアが高い地域に限定する。
「時間帯の調整」: BtoB商材であれば、土日や深夜の配信を停止・抑制し、平日のビジネスタイムに予算を集中させる。
「デバイス制限」: PCからの流入の方が商談化率が高い傾向にあれば、スマホへの配信比率を下げる。
このように配信面を絞り込むことで、勝てる領域でのインプレッションシェア(広告表示シェア)を高め、効率的に見込み顧客を獲得することが可能です。
【ステップ3】実行体制の構築とリソース確保
戦略と予算が決まっても、それを実行し続ける体制がなければ絵に描いた餅です。特にリソースが不足しがちな中堅企業において、どのような体制を組むべきか解説します。
インハウス運用と外注(代理店)の判断基準
広告運用を自社(インハウス)で行うか、代理店に外注するかは永遠の課題ですが、判断基準は「社内リソース」と「ノウハウの有無」にあります。
「インハウス推奨」: 社内に運用経験者がおり、週に数時間の調整時間を確保できる場合。高速でPDCAを回せ、知見が社内に蓄積されるメリットがあります。
「外注推奨」: 専任担当者がおらず、兼務で手一杯の場合。または月予算が数十万円以上あり、プロの技術で効率化したい場合。ただし、丸投げはNGであり、定例会での戦略すり合わせは必須です。
広告とLP(ランディングページ)の整合性担保
広告運用で成果を出すためには、広告文とリンク先のLP(ランディングページ)の整合性が不可欠です。広告で「コスト削減」を訴求しているのに、LPのトップで「機能の多さ」を謳っていては、ユーザーは違和感を覚えて離脱します。
集客した後の受け皿であるLPやフォームの改善は、広告効果を最大化する上でセットで考えるべき施策です。広告運用とLP制作・改善が分断されない体制を作ることが重要です。
リソース不足を解消する外部パートナーの活用法
社内にマーケティングの知見が少なく、かといって代理店に依頼しても「運用」しかしてくれず、「戦略」や「LP改善」まで手が回らないというケースも少なくありません。
そのような場合は、単なる作業代行ではなく、上流の戦略設計から実務の代行、サイト改善までを一気通貫で支援できるパートナーを選ぶことが一つの解です。例えば、「ferretソリューション」のような、BtoBマーケティングに特化した伴走型支援サービスであれば、戦略の策定からLP制作、日々の広告運用まで、不足しているリソースとノウハウを補完しながらプロジェクトを推進することが可能です。自社の状況に合わせて、柔軟に外部リソースを活用しましょう。
【ステップ4】運用後のPDCAと営業(IS/FS)連携
広告配信が始まってからが本番です。管理画面上の数字に一喜一憂するのではなく、実利(商談・受注)に繋がっているかを検証し、改善し続けるサイクルが必要です。
管理画面の数値だけでなく「商談化率」で評価する
マーケティング担当者は、Google広告やYahoo!広告の管理画面だけでなく、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)の数字を見る必要があります。「広告キャンペーンAはCPA 2万円だが商談化率は5%。キャンペーンBはCPA 4万円だが商談化率は20%」という場合、評価すべきは明らかにキャンペーンBです。
営業部門とKGI/KPIを共有し、営業連携体制を確立しましょう。
営業からのフィードバックを広告文・KWに反映する仕組み
インサイドセールス(IS)やフィールドセールス(FS)からの定性的なフィードバックは、広告改善の宝の山です。「『〇〇機能』というキーワードで検索してきた顧客は、自社のサービスとミスマッチなことが多い」「最近入ってくるリードは決裁権がない人が多い」といった現場の声を聞き出し、それを広告のキーワード除外や広告文の修正に反映させます。
これを実現するためには、月に一度「リードの質すり合わせミーティング」を実施するなど、強制的に情報を還流させる仕組みを作ることが有効です。
リードの質を高めるための除外キーワード設定
BtoBリスティング広告において、除外キーワード(ネガティブキーワード)の設定は必須作業です。無駄なクリックを減らすことで、CPAを抑制しつつリードの質を高められます。
「個人向け・学習意図の除外」: 「とは」「意味」「勉強」「フリー」「無料」(※フリープランがない場合)
「求職者・学生の除外」: 「求人」「年収」「採用」「給与」「募集」
「競合・他社製品の除外」: 明らかにターゲット層が異なる競合他社名や、自社で対応できない領域のキーワード。
これらを徹底するだけで、無駄な広告費を数万円〜数十万円単位で削減できることも珍しくありません。
BtoBリスティング広告運用でよくある失敗と回避策
最後に、BtoB企業の広告運用でよく見られる失敗パターンと、その回避策を紹介します。先人の失敗から学び、最短距離で成功を目指しましょう。
指名検索ばかりで新規リードが増えない
「CVは出ているが、そのほとんどが社名やサービス名での指名検索だった」というケースです。指名検索はコンバージョン率が高くCPAも安いため、一見成果が出ているように見えますが、それは「すでに自社を知っている人」を刈り取っているに過ぎません。
新規顧客を開拓するためには、指名検索以外の「課題解決型キーワード(一般ワード)」での獲得に挑戦する必要があります。一時的にCPAは上がりますが、潜在層へのアプローチなしに事業の拡大はありません。
コンバージョンは増えたが商談に繋がらない
資料請求などのCV数は増えたものの、アポイントが取れないという悩みです。これは「情報収集レベル」のリードが増えたことによる必然的な結果でもあります。
対策としては、広告側のターゲティングを厳格化するだけでなく、獲得したリードに対するナーチャリング施策を強化することです。ステップメールやセミナーへの誘導を行い、リードの温度感を高めてから営業にパスするフローを構築しましょう。
社内リソースが枯渇しPDCAが回らない
最も深刻なのが、担当者が多忙すぎて広告アカウントを放置してしまうことです。市場環境や競合の動きは日々変化しており、放置されたアカウントの成果は徐々に低下します。
社内リソースだけでPDCAを回すのが物理的に不可能な場合は、無理をせず外部の力を借りる勇気も必要です。特に、運用代行だけでなく、戦略の見直しから実務までをサポートしてくれる「人材常駐型」や「伴走型」の支援サービスを利用することで、担当者は社内調整や意思決定といったコア業務に集中できるようになります。
まとめ
BtoBリスティング広告で成果を出すためには、単なる管理画面上の運用テクニックだけでなく、事業成果から逆算された「戦略設計」と、組織全体を巻き込んだ「実行体制」が不可欠です。
「戦略」: 誰に(ペルソナ)、何を(解決策)、どう届けるか(オファー)を明確にする。
「設計」: 商談数・受注数から逆算して、適正な予算とKPIを設定する。
「連携」: 営業部門と連携し、リードの「質」を広告運用にフィードバックする。
これらを一気通貫で行うことが理想ですが、専門的なノウハウとリソースが必要となり、社内だけですべて完結させるのは容易ではありません。「戦略を描く時間がない」「何から手をつければいいかわからない」という場合は、豊富な実績を持つプロフェッショナルに頼るのも一つの戦略的選択です。
ferretソリューションでは、2,000社以上のBtoBマーケティング支援実績に基づき、戦略設計から施策実行、サイト改善までをトータルで支援しています。BtoBマーケティングの戦略を見直し、確実に成果に繋げたいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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