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BtoBペルソナ設定が機能しない3つの原因と、営業連携まで繋がる作り方【中堅企業向け完全版】

BtoBマーケティングで「ペルソナ設定」が機能しない根本原因

ペルソナ設定は、BtoBマーケティングの「土台」となる戦略設計の核です。しかし、「ペルソナを設定しても、結局成果に繋がらない」と悩む中堅企業のマーケティング担当者は少なくありません。その根本原因は、ペルソナ設定が単なるタスクとして切り離され、肝心の事業目標や施策、組織間の連携と紐づいていない「戦略不在」の構造にあるからです。

この記事の要点

  • ペルソナ設定が機能しない原因: 施策の目的化、事業目標との紐づけ不足、BtoC的発想の失敗の3点に集約されます。特にBtoBでは「組織ターゲット(企業)」と「個人ターゲット(担当者・決裁者)」の両軸で定義することが不可欠です。
  • 成功への設計手順: ペルソナ設定は机上の空論ではなく、「既存顧客の定量分析(CV率・受注率)」と「営業・顧客ヒアリングの定性データ」に基づき、客観的な根拠を持って進めるべきです。
  • カスタマージャーニーマップとコンテンツ設計: ペルソナの業界・リテラシー別(IT系 vs 製造業など)に行動パターンを可視化し、検討フェーズごとに最適なコンテンツ(ホワイトペーパー、導入事例など)をマッピングします。
  • 施策への活用と成果創出: ペルソナを営業部門、MA/SFAツールと連携させ、「良質なリード(MQL)」を正しく定義・評価し、ROIを可視化することで投資判断と施策の優先順位が明確になり、事業成果に直結します。

目次[非表示]

  1. 1.BtoBマーケティングで「ペルソナ設定」が機能しない根本原因
  2. 2.この記事の要点
  3. 3.施策実行が目的化する「戦略不在」の構造
  4. 4.成果に直結しないBtoBペルソナの典型的な失敗例
    1. 4.1.よくあるBtoBペルソナ設定の失敗例
      1. 4.1.1.例1:売り手目線に都合の良すぎるペルソナ(再現性がない)
      2. 4.1.2.例2:社内で意見が割れ、複数の折衷案となるペルソナを設定
      3. 4.1.3.例3:自社との相性の良い=成果・売上に繋がるペルソナを設定していない
  5. 5.BtoBペルソナ設計を「失敗」させない初期戦略の重要性
    1. 5.1.BtoBペルソナの基本:組織ターゲット(企業)と個人ターゲット(担当者)の両立
    2. 5.2.失敗しないためのBtoBペルソナ設定手順
    3. 5.3.営業部門との連携を前提とした「良質なリード(MQL)」の定義
  6. 6.ペルソナを活かすカスタマージャーニーマップの描き方
    1. 6.1.リテラシー別(IT系と製造業)の行動パターンを設計する
    2. 6.2.コンテンツマップへの落とし込みと施策の優先順位
      1. 6.2.1.優先順位の決め方
  7. 7.成果を最大化するBtoBペルソナの活用とリソース確保
    1. 7.1.ペルソナを起点としたコンテンツ制作の効率化
    2. 7.2.施策実行に必要なリソース確保の考え方(代行・常駐の選択肢)
  8. 8.BtoBペルソナ設定に関するQ&A
    1. 8.1.Q. ペルソナ設定にかかる期間と必要な社内リソースは?
    2. 8.2.Q. 既にMAツールを導入している場合の連携の注意点は?
  9. 9.まとめ

施策実行が目的化する「戦略不在」の構造

マーケティングの施策がいつの間にか目的化し、「リード獲得数」という数字を追うこと自体がゴールになっていませんか。リスティング広告、SEO記事、ホワイトペーパー制作など、個々の施策が、最終的な「売上」や「事業貢献」という共通の目標(KGI)と紐づいていないと、マーケティング部門と営業部門の間で軋轢が生まれます。

本来、ペルソナ設定のゴールは、誰に、どんな課題を、どう解決できるのかを明確にすることで、事業貢献度の高い「良質なリード(MQL)」を効率よく生み出し、営業が最速で受注できる状態を作ることです。ペルソナが単なる「架空の人物像」で終わってしまうと、KPIや施策の評価軸もブレてしまい、施策実行のPDCAサイクル自体が空回りしてしまいます。

成果に直結しないBtoBペルソナの典型的な失敗例

BtoBビジネスにおけるペルソナ設定は、BtoC的な「個人」の趣味やライフスタイルに寄りすぎた発想では機能しません。個人がどんなに魅力を感じても、組織として予算や決裁権がなければ購入には至らないからです。

よくあるBtoBペルソナ設定の失敗例

例1:売り手目線に都合の良すぎるペルソナ(再現性がない)

「予算潤沢で、決裁権があり、すぐに導入を決断できる担当者」といった理想的すぎるペルソナを設定してしまうケース。実際の市場にはほとんど存在せず、営業が出会う確率も極めて低いため、施策を実行しても成果に繋がりません。売り手の願望だけで描いた空想のペルソナは、戦略の土台として機能しないのです。

例2:社内で意見が割れ、複数の折衷案となるペルソナを設定

営業・マーケティング・経営層それぞれの要望を全部盛り込んだ結果、「大企業も中小企業も、IT業界も製造業も狙う」といった曖昧なペルソナになるケース。ターゲットがぼやけることで訴求メッセージに一貫性がなくなり、誰の心にも刺さらないコンテンツしか作れず、施策の精度が著しく低下してしまいます。

例3:自社との相性の良い=成果・売上に繋がるペルソナを設定していない

既存顧客データを分析せず、感覚や業界トレンドだけでペルソナを設定してしまうケース。実際には商談化率・受注率・LTVが低いターゲットを追いかけ続けることになり、リードは増えても売上に繋がらない悪循環に陥ります。データに基づく「自社と相性の良い顧客」の見極めが欠かせません。

BtoBペルソナ設計を「失敗」させない初期戦略の重要性

ペルソナ設定を成功させる鍵は、「初期戦略」として位置づけ、事業全体と紐づける設計思想を持つことです。

BtoBペルソナの基本:組織ターゲット(企業)と個人ターゲット(担当者)の両立

BtoBの購買プロセスは「組織」の課題と意思決定に強く依存します。そのため、ペルソナ設定は「組織ターゲット」と「個人ターゲット」の二軸で定義する必要があります。

組織ターゲット(企業):

定義:企業規模、業種・業界、年間売上、解決すべき組織課題、検討フェーズ(立ち上げ期か拡大期か)など、組織の属性を定義します。

重要性:どの市場で戦うか、どれくらいの売上貢献を期待するか、という事業戦略の核となります。

個人ターゲット(担当者・決裁者):

定義:所属部署、役職、役割・ミッション、抱える個人的な課題、情報収集手段、サービス選定条件など、個人の役割とモチベーションを定義します。

重要性:施策(コンテンツ、広告文)の訴求メッセージを決定し、購買行動に合わせたコンテンツデリバリーのタイミングを設計する土台となります。

この二軸を明確にすることで、初めて「誰に、何を、どう伝えるか」というブレない一貫性のあるマーケティング戦略が確立できます。

失敗しないためのBtoBペルソナ設定手順

ペルソナ設定は、机上の空論ではなく、データと現場の声を基に解像度を高めていくプロセスが必要です。

現状分析・課題の言語化(定量):

既存顧客のCVチャネル別/商材別/企業属性別の商談化率・受注率を分析し、最も効率の良い「注力ターゲット(組織)」を特定します。目標売上から逆算して、必要なリード数とMQL数を算出します。

顧客インサイトの収集(定性):

営業部門へのヒアリングを行い、現場の営業トーク、顧客のリアルな課題、競合との比較優位点、失注理由などの生の声を収集します。

また既存顧客インタビューを実施し、サービス導入の決め手、情報収集プロセス、上申時の説得材料となったコンテンツなどの購買プロセスを深掘りします。

さらに、行動履歴ログの分析を通して、実際にCVしたユーザーがどのコンテンツを、どの順番で、どれくらいの時間閲覧したかという客観的な事実(インサイト)を把握します。

ペルソナの定義と可視化:

収集した定量・定性データを基に、組織ターゲット(企業)と個人ターゲット(担当者、決裁者)のペルソナを具体的に定義し、チーム内で共有できる状態に可視化します。

営業部門との連携を前提とした「良質なリード(MQL)」の定義

ペルソナ設計の最終目的は、営業が効率よく受注できる「良質なリード(MQL)」を定義することです。

MQLの定義については単に「資料請求」をした人ではなく、「特定のCVポイント(問い合わせ、無料デモ)」からのCVや、または「役職(課長職以上)」「業種(IT/製造業)」などの属性条件を満たしたリードをMQLとして設定します。営業観点から「来て欲しい、来てくれたら嬉しいリード」でなければ、成果につながる可能性が低いため、マーケ部門と営業部門で定期的にすり合わせを行う必要があります。

組織が連動するためにはKPIレベルでの連携も重要となります。MQLの定義は、営業部門と連携して商談化率や案件化率が最も高くなるように設計します。目標とする受注数から逆算し、CPA(顧客獲得単価)の上限値を算出することで、施策への投資判断を明確にする基盤となります。

ここの戦略設計が甘いと、MQLの定義やKPI設定がブレてしまい、以降のコンテンツ制作や営業連携がすべて非効率になってしまいます。そのため、土台となる戦略設計に時間をかけ、事業貢献に繋がる設計を行うことが重要です。2,000社以上のBtoBマーケティング支援実績と、体系化された独自のノウハウに基づくferretソリューションの初期戦略設計サービスは、この最重要フェーズを成功に導くための選択肢の一つです。

ペルソナを活かすカスタマージャーニーマップの描き方

ペルソナが定義できたら、次にそのペルソナがサービス認知から導入決定に至るまでのプロセス(行動、感情、タッチポイント)を可視化する「カスタマージャーニーマップ(CJマップ)」を作成します。CJマップは、ペルソナの行動パターンに合わせて適切なコンテンツを届けるための設計図となります。

リテラシー別(IT系と製造業)の行動パターンを設計する

ターゲットの業界・リテラシーレベルによって、情報収集の手段や重視する検討ポイントが大きく異なります。

観点

ITソリューション系(中〜高リテラシー)

製造業(低リテラシー/足の長いメーカー)

情報収集手段

SEO、リスティング広告(一般/指名)、Webメディア記事、MA/SFAツールの比較サイト、SNS

展示会、業界専門誌、リファラル(紹介)、営業担当への相談、SEO(課題解決系)

重視するポイント

費用対効果(ROI/CPA)、ツールの連携性(SFA/MA)、機能の柔軟性・拡張性、PDCAのスピード

安定性(サポート体制、会社の信頼性)、導入事例(同業種/同規模)、初期費用/トータルコスト、分かりやすさ(操作性)

好むコンテンツ

ホワイトペーパー(課題解決、比較軸提供)、無料デモ/トライアル、機能詳細、料金表

導入事例(Before/After)、動画コンテンツ(操作デモ、工場見学)、初心者向けノウハウ記事

このようにターゲット像を分解し、行動パターンを具体化することで、施策の精度が格段に向上します。例えば、IT系企業には「MAツール連携」の優位性を強調したLPを、製造業には「サポート体制の手厚さ」を強調した事例記事を用意するなど、ペルソナに合わせたコンテンツ戦略を描くことが可能です。

コンテンツマップへの落とし込みと施策の優先順位

カスタマージャーニーマップの各フェーズ(認知、興味関心、比較検討)でペルソナが「知りたいこと」に対し、最適なコンテンツを配置するコンテンツマップを作成します。

参考:BtoBマーケの成功に不可欠!カスタマージャーニーマップ作成の極意と失敗パターン

優先順位の決め方

作成すべきコンテンツが多い場合、次の3つの観点で優先度を決めます。

顧客の声の出現頻度(ニーズ):

顧客インタビューや営業ヒアリングで声の多かった課題をテーマにする

事業貢献度(有効CV):

コンテンツ閲覧後、商談化や受注に繋がりやすいテーマを選ぶ

作成工数:すぐに事例やノウハウが提供できる、手元に材料があるテーマから着手し、PDCAのスピードを重視する

コンテンツタイプ:

認知/準顕在層:課題示唆型のホワイトペーパー、SEO記事(Knowクエリ)で潜在ニーズを掘り起こす

顕在層/明確層:サービス紹介資料、導入事例、クロージング型セミナー、LPで具体的な検討を後押しする

成果を最大化するBtoBペルソナの活用とリソース確保

ペルソナ策定の成功を左右するのは、戦略設計後の「実行フェーズ」にこそかかっています。リソース不足の壁を乗り越え、戦略を成果に繋げるための具体的な活用法とリソース確保の考え方を紹介します。

ペルソナを起点としたコンテンツ制作の効率化

ペルソナの課題が明確になることで、コンテンツ制作は劇的に効率化します。

テーマの明確化:
営業や顧客からの生の言葉をヒントに、ペルソナが実際に検索し得るキーワードや抱える課題を軸にテーマが決定できます。これにより、独りよがりなコンテンツや手戻りが減ります。

コンテンツの多面展開:

一つのテーマで、記事、ホワイトペーパー、動画、セミナーといった複数の形態に展開することで、コンテンツの制作工数に対して最大のリーチを確保できます。

ライティングの最適化:

営業の議事録や商談音声から得た「顧客が実際に使う言葉」をコンテンツに盛り込むことで、読者の心に響く、解像度の高いライティングが可能です。

施策実行に必要なリソース確保の考え方(代行・常駐の選択肢)

マーケティング体制が少数精鋭の中堅企業では、戦略の実行フェーズでリソース不足に陥りがちです。解決策として、外部パートナーの活用が有効です。

コンテンツ制作の代行:

SEO記事やホワイトペーパーなどの制作は、BtoBマーケティングのノウハウを持つ外部のプロに委託することで、社内リソースを割かずに質と量を確保できます。

人材常駐・作業代行:

Webサイトの更新、LPの量産、データ分析レポートの作成など、定型的な運用業務は、専門知識を持つ外部人材に常駐や代行として依頼することで、マーケティング担当者は戦略立案や施策の企画といったより創造的な業務に集中できます。

戦略設計からコンテンツ制作、人材常駐まで柔軟な支援体制を持つパートナーを活用することで、リソース不足の課題を解決できます。2,000社以上のBtoB支援実績を持つferretソリューションは、貴社の事業フェーズや課題に合わせた最適なリソースを提供します。

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BtoBペルソナ設定に関するQ&A

Q. ペルソナ設定にかかる期間と必要な社内リソースは?

ペルソナ設定は、単なる情報の書き出しではなく、データ分析と現場へのヒアリングを含むため、約1ヶ月〜3ヶ月の期間を見込むのが一般的です。

関与部門としてはマーケ担当、営業部門、経営層の3者が相互に連携を取りながら行うケースが一般的です。


期間の目安

フェーズ

作業内容

期間

データ分析(定量)

既存のCVデータ、SFA/MAデータなどの収集・分析

約1週間

ヒアリング・インサイト収集(定性)

営業部門へのヒアリング、顧客インタビューの実施

約2〜4週間

ペルソナ定義・戦略策定

収集したデータを基にしたペルソナ定義、KPI設定、戦略レポート作成

約1〜2週間

関与すべき部門と役割

部門

役割

マーケティング担当(専任)

全体設計、データ収集、顧客インタビューの設計・実施、レポート作成

営業部門

受注・失注理由のフィードバック、顧客属性データの提供、ヒアリング協力

経営層

KGI(売上目標)の提示、戦略レポートの承認


Q. 既にMAツールを導入している場合の連携の注意点は?

MAツール導入済みの場合は、ペルソナのニーズに合わせてツールを最大限に活用するためのセグメント設計とナーチャリングシナリオの最適化が重要です。

セグメント設計:

ペルソナの「業種・役職・課題」といった属性情報が、MAのメーリングリストとして機能するよう、フォーム項目と連携できているかを確認しましょう。

スコアリング設定:

闇雲に全ページにスコアを振るのではなく、ペルソナの検討度合いが飛躍的に上がる特定アクション(料金ページ閲覧、競合比較WPのDLなど)に絞ってスコアリング(または行動検知)を設定し、営業への通知フローを構築します。

ナーチャリングシナリオ:

ペルソナのリテラシーや課題感に合わせて、送るコンテンツ(メール)のテーマ、本数、タイミングを最適化します。例えば、リテラシーの低いペルソナにはハウツー記事や課題解決型のWPを、高いペルソナには機能比較やROIシミュレーションを提案するなど、セグメント別のストーリーを描きましょう。

まとめ

BtoBマーケティングで成果を出すためには、ペルソナ設計を単なるタスクで終わらせず、事業貢献に繋がる「戦略設計」として位置づけることが何よりも重要です。

ペルソナ戦略設計の要点

施策への影響

組織ターゲットと個人ターゲットの二軸で定義

訴求メッセージと施策がブレなくなる

定量データ(MQL、CPA、ROI)と定性データ(顧客の声)の活用

施策の精度が向上し、投資対効果が明確になる

営業部門との共通目標・連携体制の構築

良質なリードの定義が明確になり、受注率が向上する

戦略設計の質が、その後のリード獲得、コンテンツ制作、営業効率すべてを左右します。もし、「自社の戦略に自信がない」「リソースやノウハウが不足していて、一歩踏み出せない」とお悩みであれば、初期戦略設計の段階でプロの支援を受けることが、成果への最短ルートです。

2,000社以上のBtoBマーケティング支援実績と、体系化された独自のノウハウを持つferretソリューションは、「戦略設計」から「施策実行」「リソース確保」まで、貴社のBtoBマーケティングをどこからでも支援します。

ぜひ一度、貴社の課題についてご相談ください。

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菊池 貴行(きくち たかゆき)
菊池 貴行(きくち たかゆき)
金融機関、メディア運営会社を経て2018年より株式会社ベーシックへ入社。 ferret Oneカスタマーサクセス部にて、オンボーディングチーム立ち上げメンバーとして活躍し、顧客の「BtoBマーケティング」の立ち上げ支援を行い、 担当社数は累計120社以上。 製造業・ITサービス・コンサルティングサービスなど、有形から無形の幅広い業界の企業に対して、各社の事業理解から組織状態など踏まえた顧客に 寄り添った戦略設計や施策の設計などマーケティング支援を行う。 現在はマーケティング部にてセミナーの企画から講師を担当し、これまでに支援してきた豊富な経験をもとにした、実務に使えるセミナー内容に定評がある。

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